report /// vol.1 灘編 --- 2回目10/28

これは街の記憶をなぞろうとする街歩きです。

自分に馴染みのある街を歩くなら、その新旧入り交じった土地の変化もわかることでしょう。小さい頃に通った道(通学路など)を久しぶりに歩くと、以前のままのお店や寺社と一緒に、新しい建物や道などにも気づきます。 では、自分に馴染みのない街を歩いて、その地の記憶に近づくことはできるでしょうか。 今回歩いてみるのは、神戸市灘区のJR六甲道駅から阪神大石駅周辺です(もちろんこの辺りのことをよく知っている人もいるかと思います)。この地域は、1995年の阪神・淡路大震災で、とても大きな被害があったところです。ただ時が23年も経つと、それを知るのは容易ではありません。この街歩きでは、その地でいくつかのテキストを声に出して読んでみることもします。自分と離れた記憶へのアプローチを、街を歩くことからやってみる試みです。 


◎ ワークの趣旨や内容については1回目のレポートにも記しています。あわせてお読みください。

/// report ///

今回は、95年以降に生まれた学生さん(最年少は2000年生まれ)の参加が多かった。私以外の参加メンバーは初めてこの街を歩いた。前回は30代以上の参加者だったので、95年当時の記憶を自分なりに振り返ることが自ずと起きていた。今回は95年を振り返るというよりも、テキストとともに街を漂い歩いた感じだった。道中、民家の造りや個性的な佇まい、面白い看板など、現在の街の面白いものを、見つけつつ歩くなどした。

今回も、出発前の公園にていとうせいこうさんの小説『想像ラジオ』の冒頭を一人ずつ声に出して読んだ。(1回目のレポート参照)

そして出発。道中で、参加者の一人が歩きながら何かの機器を鞄から取り出した。尋ねてみるとアマチュア無線家だという…!

1回目と同じルートを歩いたが、当然のことながら交わされた会話も雰囲気も全くちがった。テキストを読み(テキストは前回から若干の変更を加えた)、石を置くこともした。今回は、この二つのワークが参加メンバー同士の共通項となっていた。

テキスト

テキストは、阪神・淡路大震災に関する手記、当時の噂話などのルポ、また直接関連しないが想像の種を蒔いてくれそうな小説を選んだ。

前者については、とくに「阪神大震災を記録しつづける会」が編纂した手記集を参考にした。同会は1995年から10年間、毎年手記を募集して手記集を刊行している。現在、書籍は絶版となっているが、サイトにてその全文を読むことができる。また、20年目にも冊子が発行されている。ここには、執筆者の個人的な想いや状態ーおそらく声に出して語る以前のーが綴られているものが多い。悲しみ、不安、違和、悩み、歓び、希望、ユーモアetc...さなかの言葉たちは、終止符のないまま記録された個人史の一頁であり、時を経て読む私たちに宛てられた手紙のようでもあった。

当時、遺体安置所となった灘区民ホールの対岸で、手記集第一巻より、遺体安置所で母の亡骸と対面したときのことが綴られた手記を読んだ。

石碑に刻まれた名前

街には震災や水害などの石碑やモニュメントが複数ある。紙に書かれた言葉と石に刻印された言葉。それぞれ、主体と宛先の異なる言葉のように思えた。

ある公園では、この付近で亡くなった方の名前が刻まれた慰霊碑がある。多くの慰霊碑では亡くなられた方の数が記されているが、ここでは全員の名前が記されていた。私たちは、一人ずつ、石碑に刻まれた名前を声に出した。

振り返りのお寺

終着点の妙善寺。ご住職のご好意により、本堂で振り返りをすることができた。


text : furukawa yuki


/// photo /// 

今回置かれた石たち。ちなみに、初回のWSで置かれた石は姿を消していたことがわかった。

photo : yamazaki tatsuya


おもいしワークショップvol.1 灘編

 2018年10月28日(日)

 企画・ナビゲート:古川友紀

0コメント

  • 1000 / 1000